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2. 序章

職場での Linux の人気はますます高まっています。 主に、サーバレベルでのインターネットの市場で展開されていますが、 内部ネットワークサーバやワークステーションなどの他の分野へも拡大しはじめています。 このような状況を鑑み、また後で述べるような理由もあり、私の会社は Windows9x ベースのネットワークに Linux ベースの LAN サーバを配備することにしました。 私は Linux の基本的な知識と UNIX の いくらかの知識をもって、このプロジェクトに着手しました。 このプロジェクトを通して私は、この仕事の内容について書かれたある種のドキュメントがあれば役に立つだろうと感じました。 そしてその類のドキュメントを見つけられなかったので、書く事にしたのです。

使用した様々なツールやユーティリティのインストールや設定について、 ここで改めて解説するような事はしていません。 そのような説明を繰り返す事は私には意味がありませんのでその代わり、 インストールや設定の時に遭遇した問題やそのような場合の解決法をドキュメントに含める事にしました。

2.1 筋書き

新しいサーバが設置される前の環境に関する背景を少し説明しておいた方が良いでしょう。

およそ35台の PC が広い敷地内を横切った Ethernet LAN で繋がっています。 多くのオフィスと同じように、最初は1台の PC から始まり、少しずつ拡大して現在の環境になりました。 スピードや利便性、コストの面から ピアツーピア(peer to peer)ネットワークが採用されました。 共有レベルのアクセスを利用して、ユーザ達はネットワーク越しにディレクトリやプリンタを共有しています。

それらの PC の内の1つが "サーバ" と称されるようになりました。 (これ以降、これの事を "サーバ PC" と呼ぶ事にします。) ピアツーピアネットワークにはサーバ自体存在しないので、専属のユーザをもたないという点を除けば この PC は他の PC と何ら変わりがありませんでした。 この(サーバと称する)PC はすべてのユーザが使用するためのテンプレートや小規模のデータベースなどの 共通ファイルを保存したり、社内メールシステムの為の Microsoft Mail postoffice のディレクトリに 使われていました。 Microsoft Fax を使ってこの PC を介したネットワーク FAX が送信されたり、もっと最近では メールサーバユーティリティを使った e-mail 配信も追加されました。これは定期的に社外の メールサーバに接続し、メールを再配信するものです。 近くの大多数のユーザ達の為にプリンタも共有していました。 FAX や メールのクライアントには Microsoft Outlook が利用されていました。

サーバ PC を介したトラフィックの増加、とりわけインターネットメールが増加した事で ついにはファイルアクセスのスピードが低下したり、 ユーザーがインターネットメールサーバにログオンできない事があるような事態にまで達しました。 はじめは、インターネットメールサーバのプログラムが疑われたのですが、 テストが進むにつれそれが間違いであることが証明されました。 ユーザ達の欲求不満はどんどん膨らみ、IT サポートの担当者達にこれらの苦情を次々と 持ってくるようになりました。

さらに2次的な問題も考慮しなくてはなりませんでした。 サーバ PC と称する PC の運用を経営者から見れば、 そこに誰も座っていないが故に、立派な1台の PC が "何も仕事をしていない" 事を意味していました。 ユーザ達は臨時的にこの PC をワークステーションとして使うことを許可する、という決定がなされました。 しかしこの PC は、ワークステーションとして使われている時にフリーズしてしまう事がありました。 こうなると PC を再起動する間、他のユーザは大切なファイルにアクセスができなくなるうえ、 再びアクセスできるようにデータベースやファイルの排他共有ロックを解除しなけれなりませんでした。

2.2 選択肢

この状況では何らかの救済手段が必要でした。 最も基本的なレベルの選択肢は、「修理、あるいは交換」ですが、ありがちな事に それには予算上の制限がありました。

修理

修理する、というのは一見最も迅速かつ安価な選択肢ですが、大抵の場合、 特に正確な原因が判明していない場合には容易な事ではありません。 ワークステーションとしてはこの PC には何の問題もないのですが、サーバとしてはしばしばその仕事量に 圧倒されている様に見えました。 この状況は、ネットワークトラフィックを高速化するネットワークスイッチを設置することで一部解消することは可能でしたが、 結果としておそらくは高速化したトラフィックの要求に必死でついて行こうとするサーバPC のボトルネックを作り出した 事でしょう。 その PC は Windows98 を走らせていました。 これは、デスクトップ環境としては全く問題ないのですが、サーバとしてとなるととたんに「苦闘」し始めるという代物です。 つまり、特にネットワークがこのまま拡大し続けるのであれば、 この選択肢はせいぜいしばらく問題を先送りにするだけのその場しのぎであると思われたのです。

交換

サーバ PC を専用のサーバと交換し、クライアントサーバの関係を構築すれば、予想されるネットワークの規模とトラフィック を許容できたでしょう。 ここでの(専用サーバの)選択肢は WindowsNT か NetWare のどちらかであり、専用のサーバとは伝統的に多額の出費を伴うものでした。 近年、Linux が大変注目されるようになり、別の交換戦略をもたらしました。


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