Battery Powered Linux Mini-HOWTO Hanno Mueller, hmueller@kabel.de 5 May 1997 この文書は、Linux システムが消費する電力量を削減するためには設定にどのよ うに手を加えればよいかを述べたものです。これは携帯用コンピューター上で Linux を使っているすべての人に有益なものとなるでしょう。電池の取り扱い方 に関する一般的な注意にも言及しています。卓上機でLinux を使っているなら、 この文書に目を通す必要はないでしょう。 1. はじめに 「窮すれぱ通ず」 1.1. 御質問の前に これは「ラップトップに Linux を組み込むにはどうすれぱいいか」を取り扱うも のではありません。この文書は「ラップトップに組み込み済みのLinuxを最適化 するためにはどうすればいいか」を論じるものです。Linux の組み込みについて は "Installation-HOWTO" をお読みになるか、配布業者の提供している手引書を 参考にしてください。 またこの文書は、無停電電源や powerd デーモンの使用法を取り扱うものでもあ りません(UPS は大きな電池ではありますが)。この分野に関しては UPS-HOWTO をお読み下さい。 1.2. この文書の守備範囲 最近携帯用コンピューターを使う人が多くなるにつれ、これにLinux を載せたい という人も増えてきました。 ラップトップに Linux を載せて使うのには何の困難もないのがふつうです。と にかく試してみてください。ほかのOS とは違い、Linux はいにしえのハードウェ アを今でもサポートしています。したがって、時代遅れになった携帯機に Linux を載せて新しい用途に活用することもできるのです。 ラップトップに Linux を組み込む際の助言が必要な方、ラップトップ本体につ いて御質問がおありの方は、 http://www.cs.utexas.edu/users/kharker/linux-laptop にある Linux ラップ トップに関するすばらしい Webpage を参考にしてください。有益な情報や詳しい 助言が満載されています。Linux Laptop のページには、ラップトップ各機種・ チップセットごとのハードウェア設定情報が掲載されています。 本 HOWTO は、ポータブルに共通する問題の一つである「電力消費」の問題に主 題を絞り込んでいます。 これまでのところ、ラップトップ用に最適化した設定の仕方を提供してくれてい る配布はないようです。電池を節約してシステムの駆動時間を引き延ばすために 役立つちょっとした工夫を集めてみることにしたのは、この種の情報をどこから も手にいれることができなかったからなのです。 (注: 「私のラップトップではここに書いてある助言はあまり役に立たなかった」 という御叱りの御手紙もちょうだいしています。ここで紹介している方法はいず れも確かに効果があるはずです。とはいっても、奇跡を待ち望んではいけません。 私自身の成果は90分程度だった電池駆動時間を120分以上にまで延長できたこと です) 1.3 本書の読み方 ラップトップ通の方なら、「一般的情報」の項は飛ばしても差し支えないでしょ う。通が本当に求めている情報は「一般的システム設定の変更例」の項に納めら れています。Linux の配布業者の方は、是非「Linux 配布業者への御願い」の項 を御一読下さい。 1.4 フィードバック 読者からの御意見は大歓迎です。宛先は hmueller@kabel.de です。御使いのシ ステムでも本文書のヒントは役に立ちましたでしょうか。新しい工夫を発見なさ いましたか。本書が掲載したアドレスやリンクですでに変更になっているものは ありませんでしたでしょうか。 残念ながら、ラップトップ各機種独自の問題については助言を差し上げる能力を 持ち合わせわせておりません。ラップトップの教祖を自称するつもりはありませ ん。たまたま自分自身がラップトップを所有しており、集めた情報をみなさんと 共有したいと考えているだけなのです。まず最初に Linux Laptop webpage を調 べてください。おそらくすでにだれかが御使用中の機種に関する頁を作成してい ることでしょう。またメーカーの技術相談も試してみるべきでしょう。あるいは、 comp.sys.laptop というニュースグループに質問するという方法もあります。 1.5. 免責 ここで紹介した方法はすべて著者自身が試してみたもので、著者のラップトップ ではうまく機能しています(特記した場合は除く)。とはいうものの、ここで紹介 した方法がシステムに重大な損害を与えたり、損壊させたりする危険性がないと いう保証を差し上げることはできません。御自分の Linux の設定で試してみる前 に、大切なファイルのバックアップを取っておくことが重要です。もしまずいこ とが発生しても、著者はデータの損失に対するいかなる責任をも負いません。言 い換えれば、「訴えないでくださいね」ということです。 1.6. 著作権 この文書は HOWTO に対する通常の著作権条項の条件のもとで配布されるものと します。この著作権条項は http://sunsite.unc.edu/mdw/linux.html の HOWTO のフォルダの中に収録されています。 2. 一般的情報 この章ではラップトップ用電池に関する若干の技術情報、一般的な電力節約法を 取り扱います。ここで提供する情報は Linux に特化したものではありません。 ラップトップ通の方ならとっくに御存じのことばかりでしょう。 2.1. 電池の種別 現在ポータブルコンピューターが一般的に採用している電池には三つの種類があ ります。 NiCd 電池は長年にわたって標準的な技術でした。しかし今日では時代遅れになっ てしまい、新型のラップトップはこれを採用しなくなっています。NiCd電池は重 い上に、「メモリー効果」を生じやすいのです。完全に放電していないNiCd 電 池を充電すると、電池は充電前の充電度を「メモリー」していて、この値を次の 充電時にも使い続けてしまうのです。 メモリー効果が発生する原因は、電池の成分が結晶化することにあります。この 結果、電池の寿命が短くなってしまったり、著しい場合には完全にだめになって しまうのです。これを回避するためには、電池を完全に放電させてから、再び完 全充電するという作業を少なくとも数週間に一度は行う必要があります。 (メモリー効果に関する註記: Jomes Youngman さんは下記のようなかなり大胆な 電池の修理理法」(というべきかどうか)を御存じです。「NiCd 電池にメモリー 効果の影響がでてきたら、電池をコンピューターから取り外し30cm ぐらいの高 さから机か床の上に落としてください(水平に落とすようにしてください)。」と のことです。同氏がおっしゃるには、こうすると電池の中にできているメモリー 効果の原因となるヒゲ状の部分が壊れるのだそうです。この方法が NiCd 以外の 電池にも通用するかどうかは分からないようです) カドミウムはたいへんな猛毒です。ですが、販売店に返却なさればカドミウムの 大部分を再生再利用に供することができます。 興味がおありかもしれないので、Nicd 電池の定格を掲げておきます。 セル電圧: 1.2 V 単位重量当り電力量: 40 Wh/kg 単位容積当り電力量: 100 Wh/l 最大電力量: 20 Wh 充電可能温度: 10 to 35 C (50 to 95 F) 放電可能温度: -20 to 50 C (-5 to 120 F) 貯蔵可能温度: 0 to 45 C (30 to 115 F) 現在低価格ラップトップが多用しているのが NiMh 電池です。この種類の電池に はNiCd より小型でメモリ効果の影響が小さいという特徴があります。 この温度の範囲内でも、室温が高すぎたり低すぎるときには障害が発生すること があります。NiMh にはそれほど危険ではなく毒性もない物質が使用されていま すが、再生・再利用を完全に行うことはできません(しかし、将来にはこの状況 にも変化があるでしょう)。 NiMh の定格: セル電圧: 1.2 V 単位重量当り電力量: 55 Wh/kg 単位容積当り電力量: 160 Wh/l 最大電力量: 35 Wh 充電可能温度: 10 to 35 C (50 to 95 F) 放電可能温度: 0 to 45 C (30 to 115 F) 貯蔵可能温度: 0 to 30 C (30 to 85 F) 最近の高性能電池はリチウムイオン技術を採用しています。この電池には理論上 メモリー効果はありません。しかし場合によっては、同様の問題に見舞われるこ とがあります。リチウムイオン電池には環境に有害な物質は含まれていません。 とはいっても他の電池と同様に、再生・再利用向けに回収する必要があります。 LiIon の定格: セル電圧: 3.6 V 単位重量当り電力量: 100 Wh/kg 単位容積当り電力量: 230 Wh/l 最大電力量: 60 Wh 充電可能温度: 0 to 45 C (30 to 115 F) 放電可能温度: -20 to 60 C (-5 to 140 F) 貯蔵可能温度: -20 to 60 C (-5 to 140 F) 電池の箱が同じように見えたとしても、他の種類の電池に取り替えることはでき ません。御使いの電池の種類とは充電の仕方が違うからです。さらに、大部分の 製造元が充電回路をラップトップに内蔵しているのも、他の種類に取り替えられ ない理由の一つです。疑問がある場合には、御使いのラップトップでもっと新し い種類の電池使えるかどうかを製造元に問い合わせてみてください。 長い間使用していなくても電池は少しづつ自己放電しています。またどんなに注 意を払っていても、500-1000回充電すると電池を取り替える必要が生じます。か といって今のところ、交流に接続している間電池なしてラップトップを使用する ことはお奨めできません。電池はピーク電圧に対する保護機能をも果たしている ことが多いからです。 メーカーは数ヵ月ごとに電池の形状を変更しているので、数年前のラップトップ 用の予備電池を見つけるのは難しいかもしれません。在庫がなくならない内に、 予備電池をすぐ手にいれておくべきです。 2.2. 電力の節約 - わかりやすい方法 システムの電力消費を削減するもっとも簡単な方法を以下に示します。もっとも、 そう多くの人がこのやり方を採用しているわけではないので「自明」のものとは いえないかもしれませんが...。 必要がないときには、ディスプレーのバックライトを暗くするか消してしまうか にしましょう。また TFTは DSTN より電力をたくさん消費します。(なぜ安いラッ プトップを買ったのかを説明するときの格好の口実になりますね) (David Bateman さんからは「電池オン、ラップトップのディスプレーオフの状 態にして CRT スクリーンを使えば、電池の持ち時間が30%程度長くなる」との御 便りを頂きました。しかしこれはあまり役に立つ工夫ではありません。CRT につ なぐ電源があるなら、ラップトップ用の電源もあるはずですから。) 本当に必要な処理能力はどれだけかということを考えましょう。文書編集を大き く越えるような作業を家の外でやっていますか。(まあ私に限って言えば、家の 外で linux カーネルの構築をしたりはしませんね)電池で駆動している間 CPUの クロックを遅くしてやっても電力消費を削減できるのです。CPUのクロックを通 常速と低速に切り替えることができるラップトップはかなりたくさんあります。 電池駆動時には外付け機器類(印刷機、CRT モニタ、ZIP ドライブ、携帯カメラ など)の使用を控えましょう。私のラップトップの場合標準的なインクジェット プリンタを接続すると、電池の持続時間は120分から20分にまで減少してしまい ました。 内蔵機器類(ディスケットドライブ、ハードディスク、CD-ROM) の使用を必要最 小限にとどめましょう。特に CD-ROM にアクセスすると電池の持続時間は著しく 短くなってしまいます。 PCMCIA カードも大量の電力を消費します。ですから、不必要なときにまでモデ ムやネットワークカードを差しっ放しにしないようにしましょう。しかしながら この点に関してはPCMCIA カードメーカー間の違いも大きいので、購入する前に 製品の特徴をよく調べるようにしましょう。(使用していないときにも「切」状 態にならないようなカードもあるということです。) 軽いソフトを使いましょう。肥大したマルチメディアソフトは軽いワープロとは 比べ物にならないほどシステムやハードディスク/ CD-ROM を酷使するのです。 これからラップトップを購入しようとする場合、電池の持ちを重視するならセカ ンドレベルキャッシュつきのものは避けましょう。これがついていると速度は一 ないし二割上昇し、マルチメディアソフトが快適に利用できるようになります。 しかしそのかわり、電池の使用量も著しく増大します。Bjoern Kriews 氏による と、「ほぼ同一の機種で比較した場合、キャッシュなしが4時間半使えたのに対 し、キャッシュつきのものは2時間半しか使えなかった」とのことです。 購入を検討している方には、もう一つ助言を差し上げましょう。それは「最高速 の CPU を搭載した最新型には手を出さないように」というものです。大抵の場 合、メーカーは特に公表することなく既発売機種の改良を実施しています。古い CPU を採用した「新バージョン」の方は、同一機種の初期バージョンより発熱量 や電力消費量が小さくなっているのです。確かにラップトップ用に改良された CPU を使用していない「自滅型ラップトップ」も出回っています。本稿執筆時点 の最新世代ラップトップには Pentium-200 が搭載されていますが、電池の持ち 時間は20分ほど、膝を焦がしかねないほど発熱するという代物です。 さて、御分かり頂けましたでしょうか。Linux 搭載したラップトップで複雑な仕 事をするのは断念しようと考えるに十分な制約は上記のようにいくつも存在する ようです。(電池を節約する裁量の方法は、何もしないことです。そうすれば、電 池が上がるまでの時間をほぼ100%延長できるでしょう) それでは、次に仕事の能率を犠牲にすることなく電力消費量を削減するために役 立つもっと実用的な方策を御紹介することにしましょう。 3. APM (Advanced Power Management) 携帯用のシステムの場合はもちろんのこと、卓上機でも APM (Advanced Power Management) がつかえる機種が多くなっています。この章ではLinux のカーネル が備えている APM 機能を使用する方法を説明します。経験豊富なLinux ユーザー は退屈で読み飛ばしてしまいたくなるかもしれません。 3.1. APM の効能 APM の効能を詳述するのがこの節の目的ではありません。詳しくは Linux APMド ライバのページ (http://www.cs.utexas.edu/users/kharker/linux-laptop/ apm.html を参照してください。知っておく必要があるのは「APM を使えば CPU が BIOS に "今はたいしたことをしていないから、BIOS 自身で電力節減に努め なさい"という指令を伝えられるようになるということだけです。CPU のクロッ クを遅くする、ハードディスクの回転を止める、ディスプレーのバックライトを 消す等は BIOS の仕事なのです。 システムを一時停止(あるいは休眠)状態にしたり、ハードディスクを一時停止 (または冬眠)状態にするのも APM の機能です。このほかかっこはいいけれどあ まり重要とはいえない機能としては、 shutdown -h でシステムを停止させずオ フにしてしまうというのがあります。 まともな APM BIOS を装備している会社ばかりではありません。つまり、Linux の APM ドライバと相性が悪いラップトップも中にはあるのです。(うまく行かな い場合には、立ち上げ時あるいは「一時停止状態」から復帰したときに固まって しまうことが多いようです) 3.2. Linux でAPM 機能を使用する方法 簡単至極、カーネルを再構築するだけです。やり方を御存じない方は、 Kernel-HOWTOを御覧下さい。 設定書式の "character devices" の項には APM BIOS の部分があり、初 期設定では以下の通りすべての機能を利用するようになっています(2.0.30 以上 の場合) Advanced Power Management BIOS support: Yes Ignore USER SUSPEND: No Enable PM at boot time: Yes Make CPU Idle calls when idle: Yes Enable console blanking using APM: Yes Power off on shutdown: Yes 設定書式のヘルプ文書を御読み下さい。各選択項目の詳細な説明はこのヘルプ文 書に記載されているので、ここでは割愛させて頂きます。 御使いのシステムが APM BIOS 基準の機能を完全には満たしていないような場合 に特定の選択項目を利用すると、システムがクラッシュしてしまうかもしれま せん。新しいカーネルを使う際には APM 機能を一通り試して、うまく稼働する かどうかを確認してください。 (画面の消灯に関する註記: David Bateman 氏の報告によると、現行バージョン である XFree 3.2 とは相性が悪いので「画面消灯機能」は使えないとのことで す。同氏は「X を起動すると、画面が消灯してしまうという症状がでます。この 症状は任意のキーを押してやると解消できるのがふつうです。これは些細な問題 ですが、いらいらの種となるのも確かです。次の XFree は様々なラップトップ チップセット用の DPMSをしっかりとサポートする予定で、その中には LCD をオ フにする機能も含まれるはずです。XFree 3.2A にある xsetのマニュアルを参照 してください」と述べています。同氏はさらに「ディスプレーのバックライトの 寿命は、点滅の回数によって決まります。したがって、電池の持ち時間をとるか、 バックライトの寿命をとるかという点で妥協が必要なのです」とも報告している) 3.3. APM 機能と PCMCIA ドライバ カーネルの再構築を済ませた後には、忘れずに Linux の PCMCIA ドライバも再 構築するようにしてください。 大抵の配布に同梱されている構築済みの PCMCIA ドライバでは APM が使えないよ うになっています。したがって、BIOS はカードアダプタを「切」にすることが できません。 カーネルを新しい版にした場合やもとの版が"module version information"「あ り」で構築したものであった場合には、ドライバの再構築が必要です。("module version information" の選択項目はカーネル設定の"loadable module support" の項にあります) PCMCIA ドライバを構築する方法の詳細については PCMCIA-HOWTO を御読 み下さい。あるいは Linux PCMCIA ドライバのホームページである http://hyper.stanford.edu/HyperNews/get/pcmcia/home.html をお訪ね下さい。 3.4. apmd パッケージ APM の組み込みを済ませたら、apmd パッケージを Linux APM ドライバの頁から 取得してください。これは絶対に必要というものではありません。しかしこれに は有用なプログラムが集まっています。apmd デーモンは電池の挙動を記録し、 電池が消耗すると警告を発してくれます。apm はシステムを一時停止させるため のシェルコマンドです。また、xamp は電池の現況を表示するものです。 (注:一時停止状態から復帰した際に PCMCIA カードに問題が発生するような場合 には、別の apmd パッケージを http://www.cut.de/bkr/linux/apmd/apmd.html から入手してください。これは一時停止状態にはいる前に PCMCIA ドライバモジュ ールを取り除き、復帰時にこれを再ロードする機能を備えています) 3.5. APM をサポートしていないラップトップの場合 コンピューターの BIOS が省電力機能を全くサポートしていない場合(apm がない 古い BIOS でも少なくともハードディスクやディスプレーを待機状態にすること は可能なはずです)にも、 hdparm -S でハードディスクの待機時間を設定するこ とができます。これだけでも効果は絶大です。ハードディスクは大量の電力を消 費するからです。hdparm は組み込み済のはずですから、hdparm のマニュアルを 読んで命令の書き方を調べてください。 4. 一般的なシステム設定の変更例 ラップトップでLinux を使うようになってから、ハードディスクへのアクセスが 数秒ごとに発生していることに気が付きました。これはシステムにだれもログイ ンしていないときも同じでした。ハードディスクは決して省資源モードに入るこ とがなかったのです。ハードディスクの駆動を抑制すれば、電池の稼働時間はグ ンと長くなります。この章にこのためのやり方を集めたのは、その効果が大きい からなのです。 試験に利用したのは RedHat 4.1です。配布によっては設定ファイルの置場所が 異なっているかもしれません(その節には、当方まで御知らせ下さい)。 4.1. crond デーモンと atrun 一分ごとに起動するプロセスがあるかどうか/etc/crontab というファイルを調 べて下さい。atrun が見つかることが多いでしょう。 (訳注: slackware の場合、 /var/spool/crontab/root です) at 命令を使えば、これから先そのうち起動される命令をスプールできます。 Linux システムの中には、この仕事を atd というデーモンにまかせているもの もあります。これに対しRedHat などの場合には、crond というデーモンが一分 毎に atrun を起動します。 たいていのシステムの場合、これは本当に必要なものではありません。at 命令 が正確な時間に起動されることが死活的であるというのは稀だからです。/etc/ crontab には以下のような一行が見つかるかもしれません。 # Run any at jobs every minute (at を一分ごとに起動) * * * * * root [ -x /usr/sbin/atrun ] && /usr/sbin/atrun これを以下のように書き換えても何の問題もありません。 # Run any at jobs every hour (at を一時間ごとに起動) 00 * * * * root [ -x /usr/sbin/atrun ] && /usr/sbin/atrun 詳しくは crontab.5 のマニュアルを御読み下さい。フォークによっては crond デーモンなしでも機能します。この場合には crond デーモンを完全に外してし まってもかまいません。 4.2 update / bdflush デーモン Linux が特定のタイミングで処理するオープンファイルバッファはかなりの数に 達します。すなわち、システムはファイルに加えられた変更をハードディスクに 記録されたことを極力速やかに確認しなければならないのです。さもなければ、 システムがクラッシュした際には、変更内容が失われてしまうのです。 この仕事を受け持っているのが update / bdflush デーモンです。(同一のプロ グラムが二つの名前を名乗っています。したがって起動する際にはこのうちのど ちらかの名前を呼んでもかまいません)初期設定では、flush を五秒ごとに、 sync を三十秒ごとに呼び出しするようになっています。 御使用中のハードディスク上のファームウェア次第ですが、著者の機械の場合こ の初期設定ではハードディスクにアクセスしっ放しになります。(ハードディス クによっては、全く変更がなくてもキャッシュラムをフラッシュするようです) Linux がしょっちゅう「落ちる」というようなことはもうなくなっているので、 著者は上記の両設定値を 3600秒に変更しています。これが問題を引き起こした 例はなく、ハードディスクへのアクセスも定期的に停止するようになりました。 (もちろん今システムが落ちたら、ファイルがかなりたくさんやられてしまうで しょうが) RedHat 4.1 の場合 /etc/inittab 中の update 呼び出しを次のように変更します。 ud::once:/sbin/update -s 3600 -f 3600 Suse 4.4.1 (訳注:ドイツでかなり幅をきかせているの配布の一つ)の場合 update を呼び出ししているのは /sbin/init.d/boot Slackware の場合、 update を呼び出ししているのは /etc/rc.d/rd.S です。 詳しくは update のマニュアルを参照してください。 4.3. syslogd デーモン syslogd デーモンは、/var/log ディレクトリにある Linux の様々なシステムロ グファイルを司っています。システムメッセージが発せられる度にログファイル を同期させるというのが初期設定となっています。 この機能を停止させるには、/etc/syslog.conf 上に記載されているファイル名 の前にダッシュ "-" をつけくわえます。以下の例は著者の syslog.conf です。 # Log anything (except mail) of level info or higher. # Don't log private authentication messages! *.info;mail.none;authpriv.none -/var/log/messages ここでも、クラッシュ時の問題点の報告がディスクに保存されないという二律背 反に直面することになります。 4.4. init コマンド ブートアップ中に初期プロセスやデーモンを起動するために使用するのが init コマンドです。このコマンドも、各プロセスごとに sync を呼び出しします。 この点を変更するためには、ソースコードから sync() 呼び出しを取り除き、init コマンドを再コンパイルする必要があります。 ファイルバッファが失われるという問題は、 /etc/rc.d/init.d/halt という書式のファイルシステムをアンマウントす る直前の部分に sync 呼び出しを付け加えるという方法で回避できます。 4.5 スワップ パーティション Linux のスワップパーティションは仮想記憶を用いて物理的メモリ空間を広げる ためのものです。スワップパーティションを使うというのは、ディスクアクセス の原因の一つとなります。御使いのラップトップがラムを十分装備している場合、 あるいは軽いアプリケーション(vi のような)を使う場合には、スワップを「切」 にすることを考慮したくなるでしょう。 スワップを「切」にできるかどうかはもちろん「何をしようとするか」次第です。 4M や 8M のメモリでは不十分です。どうしてもスワップパーティションが必要 です。8 - 16 M もあれば、コンソールを使うアプリケーションなら難なく利用 できます。マルチタスク機能を諦めるなら、スワップを「切」にしても危険はな いでしょう。X-Windows 環境を使うには潤沢なメモリが必要です。16M 以上のメ モリがない限りスワップは必須です。 (註記:著者のラップトップは16Mですが、スワップを用いないで emacs 一つ、 bash シェルを四つ走らせながらカーネルの構築をしてもメモリ不足を来たすこ とはありません。著者にとってはこれで十分です) 既にスワップパーティションを設定してしまっている場合でも、これを使わない ようにすることはできます。 /etc/rc.d/rc.sysinit にある swapon を呼び出す 部分の先頭に "#" を付け足せばいいのです。スワップを常時オフにはしてしま いたくない時には、システム立ち上げ時にスワップ使用の可否を問い合わせるよ うにしておきましょう。RedHat 4.1 の場合には/etc/rc.d/rc.sysinit、Suse 4.4.1 の場合には /sbin/init.d/boot を以下のように記述します。(Slackware の場合には、 /etc/rc.d/rc.S です) echo "Should the system use swap?" echo " 0: No." echo " 1: Yes." /bin/echo "Your choice: \c" read SWAPCHOICE case "$SWAPCHOICE" in 0) # Do nothing. echo "(Swap partitions disabled)" ;; *) # Start up swapping. echo "Activating swap partitions" swapon -a esac こうしておけば、交流電源を使用しているときにはスワップを用い、電池を使用 しているときにはスワップを用いないといったことが可能となります。 4.6. apace httpd webserver デーモン 著者は Website 用の cgi 書式の作成・試験にラップトップを使用しています。 ローカルの Web サーバーをラップトップ上で立ち上げているのはそのためなの です。書式を試験したり頁を時々検査したりするだけの人にとって標準設定はい ささか過ぎたるものでしょう。 httpd.conf にある MinSpareServers、 StartServers の値を 1 に変更してくだ さい。ローカルの試験サイトにはこれで十分でしょう。 Web サーバーのログを取るのをやめたい際には、httpd デーモンを再コンパイル するしか手がありません。詳しくは当該文書を御読み下さい。 4.7. 更なる最適化を目指して Linux システムがまだハードディスクを頻繁に触りに行きすぎるように思える時 には、ps ax コマンドを使って一体何が起こっているのかを調べるという手があ ります。この命令は現在走っている全てのプロセスをフルネームで表示してくれ ます。場合によっては、各プロセスのコマンドライン引数も表示されます。 (訳注:表示が画面の右端で切れてしまうときには、 ps axwww とします) 次に各プロセスのマニュアルを読んで、その正体は何か?、挙動を変更するには どうすればいいのかを調べてください。この手法を使えば、どのプロセスがハー ドディスクへのアクセスを頻繁化させている主犯かを突き止めることができるは ずです。 新発見がありましたら、是非著者までE-mail を御送り下さい。 5. 付録 5.1. Linux 配布企業の方への御願い Linux の配布を行っている業者の方がこの文書を読み通してくださったとしたら、 これは幸いなことです。 ラップトップが日に日に普及してきているにも関わらず、Linux の配布を行って いる企業の中には未だに携帯用コンピューターへの対策が十分ではない所が多い ようです。御社の配布に手を加えて、この文書を無用のものにしてしまってくだ さい。 ラップトップ環境を最適化した初期設定をインストール機能に組み込むこと。 「最小限のインストール」のダイエットは不十分なことが多い。ラップトップユー ザーが外で利用するには不必要なものがまだたくさん含まれています。若干の例 を挙げるとすれば、三種類もの vi は必要ありません(Suse Linux)。携帯システ ムの場合には、印刷機能も必要ないのが通例です。(印刷機などとは金輪際接続 しないはずです。印刷をするのは家のデスクトップでというのがふつうでしょう) 。また、ネットワーク機能も全く不要だというラップトップもあります。 消費電力管理の改善、PCMCIA サポートの円滑化。ユーザーが必要に応じてイン ストールできるような APM BIOS 対応の構築済みカーネルおよび代替PCMCIA用ド ライバの配布。コンパイル済み APMD パッケージの配布。 ネットワーク設定を動的に変更する機能の付加: ラップトップで Linux を利用 している人の多くは、ネットワーク設定の異なる場所間の移動を繰り返していま す(家庭ネットワーク、職場あるいは大学のネットワークなど)。つまり、ネット ワーク ID を頻繁に変更しなければならないことが多いのです。大抵の配布の場 合、Linux システムのネットワーク ID を変更するのはやっかいな仕事となって います。 御社の配布にラップトップ用の最適化を行われた際には、どのような機能を付け 加えられたかを著者にまで御一報下さい。将来の本HOWTO には御社配布のラップ トップ向け機能を紹介する項を設けさせて頂きます。 5.2. 謝辞 電池技術に関する情報の大部分は C't Magazine fuer Computertechinik誌 ( Heise Verlag Hannover, Germany 刊行)10/96号、204ページ以下に Michael Reiter氏が寄稿した「電力節約」という記事をもとにしたものです。同誌の許可 は取得済みです。この出版社のweb サイト http://www.heise.de/ を訪ねてみて ください。 この文書を著述するにあたっては以下の方に御世話になりました。 Frithjof Anders <anders@goethe.ucdavis.edu> David Bateman <dbateman@ee.uts.edu.au> Markus Gutschke <gutschk@uni-muenster.de> Kenneth E. Harker <kharker@cs.utexas.edu> R. Manmatha <manmatha@bendigo.cs.umass.edu> Bjoern Kriews <bkr@rrz.uni-hamburg.de> James Youngman <Youngman@vggas.com> 5.3. 本文書について 最新版が HOWTO の通常配布場所であるhttp://sunsite.unc.edu/mdw/linux.html やあまたのミラーサイトにあるかもしれません。また、著者のホームページ http://www.kabel.de/~umueller/ をも御覧下さい。 この文書はドイツ鉄道を使ってハンブルグとハノーファーを往復する時間を利用 して作成したものです。(新型の超特急ICE-2 の車両にはラップトップ用の電力 供給口が設けられています。万歳) というわけで、私は機嫌良くまた移動中です。 (訳注:直流電力の供給があるのは一等車だけのような気がする...。このかたの 車両はまだあまり普及していないので、ドイツ出張の方はあまり期待なさらない 方がいいかも) 日本語版作成: 佐藤亮一 (rsato@ipf.de)